Issue4
Current View on Urology Issue4
最近の学術誌から

■前立腺癌

(1) 局所前立腺癌における根治的前立腺全摘除術とwatchful waitingの比較
Radical prostatectomy versus watchful waiting in localized prostate cancer: the Scandinavian prostate cancer group-4 randomized trial
Bill-Axelson A,et al. : J Natl Cancer Inst. 100: 1144-54, 2008

局所前立腺癌における根治的前立腺全摘除術とwatchful waitingを比較した、randomized trialの第2報。中央値10.8年の観察により根治的前立腺全摘除術が前立腺癌による死亡率と転移率を有意に改善した。

  • この研究のwatchful waiting(WW)はactive surveillanceではないことに注意。WW群は転移してはじめて内分泌療法を受けることができるというすごい研究。その状況でも手術のメリットが明らかに大きいのは、65歳以下に限られる。


(2) 根治的前立腺全摘除後の尿禁制回復はMRIによって評価した尿道長と尿道の線維化に関係する
Recovery of urinary continence after radical prostatectomy: association with urethral length and urethral fibrosis measured by preoperative and postoperative endorectal magnetic resonance imaging
Paparel P,et al.: Eur Urol. [Epub ahead of print] 2008

根治的前立腺全摘除前後に尿道長をMRIにて評価した。術前、術後とも尿道が長いほど尿禁制は保たれており、また、尿道周囲の線維化が尿禁制の回復に関与している可能性が示された。

  • 尿道周囲の線維化をMRIで評価するのが新しい。尿道がもともと短いのであれば放治をすすめたほうがよい?


(3) 恥骨後式前立腺全摘除術後のリンパ節陽性数と予後
Good outcome for patients with few lymph node metastases after radical retropubic prostatectomy
Schumacher MC,et al.: Eur Urol. 54:344-52, 2008

恥骨後式前立腺全摘除術において、拡大骨盤内リンパ節隔清(10個以上のリンパ節)を行った際、リンパ節陽性が2個以下であれば予後が比較的良好であることが示された。

  • PSAがまだ高い時代の後ろ向き調査ではあるが、内腸骨動脈領域のリンパ節転移が、閉鎖神経節よりも多いことが示されている。High risk群では徹底した郭清が必要だろう。Studer自身の解説はNat Clin Pract Urol.5:10-1,2008を参照。


(4) 根治的前立腺全摘除術後の理学療法士の指導による骨盤底筋体操の有用性
Does physiotherapist-guided pelvic floor muscle training reduce urinary incontinence after radical prostatectomy? A randomised controlled trial
Overga(aの上に○)rd M,et al.:Eur Urol. 54:438-48, 2008

根治的前立腺全摘除術後の尿失禁対策として、理学療法士による骨盤底筋体操指導の有用性を検討した。理学療法士の指導の有無により、1年後の尿失禁回復率に20%の差が生じた。

  • 理学療法士が継続的に介在することにより、骨盤知覚と筋力の両面において筋肉トレーニングがより有効に働く可能性がある。医療の本質を突く論文。


(5) 夜間の低用量シルデナフィルが神経温存前立腺全摘除術後の勃起機能を回復する
Recovery of erectile function after nerve-sparing radical prostatectomy: improvement with nightly low-dose sildenafil
Bannowsky A,et al.: BJU Int.101:1279-83, 2008

シルデナフィル25mg/日投与群はコントロール群と比較し86% vs 66%と勃起機能の回復率が良好であった。治療群はカテーテル抜去当日でも夜間勃起現象がみられており、シルデナフィルの投与は勃起機能の改善に有用である。

  • 神経温存後はPDE5阻害薬でのリハビリが常識化してきた。費用対効果が問題ではあるが、神経温存の判断をした以上はアウトカム調査の意味でもぜひ患者にすすめたい。


(6) 前立腺癌治療を受けた患者のQOLと満足度
Quality of life and satisfaction with outcome among prostate-cancer survivors
Martin GS,et al.: N Engl J Med.358:1250-61, 2008

局所前立腺癌の治療選択に治療後のQOLと満足度は重要である。内分泌療法は活力度を著しく損なう。小線源療法は勃起機能障害が少ないと考えられていたが、2年後は神経温存前立腺全摘除術とほとんど差がない。

  • 選択された治療が無作為化されてはいないので、バイアスはあるもののこの論文が患者のインフォームド・コンセントにおける標準となろう。日本人でのデーターが重要である。


(7) 前立腺癌特異的死亡率における生化学的再発期間とPSA倍加時間
Time to biochemical failure and prostate-specific antigen doubling time as surrogates for prostate cancer-specific mortality: evidence from the TROG 96.01 randomised controlled trial
Denham JW,et al: Lancet Oncol.9:1058-68, 2008

局所前立腺癌における放射線とホルモン療法の併用療法において、生化学的再発期間とPSA倍加時間は前立腺特異的死亡率を予測する有用なサロゲート・マーカーである。

  • 簡単な結論だがサロゲート・マーカーとは何か、臨床試験の構造を知るよい勉強になる。読むのには腕まくりして集中することが必要! J Natl Cancer Inst. 98:516-21,2006も参考になる。


(8) 病院関係者における超音波ガイド下前立腺生検後の多剤耐性菌
Multi-drug-resistant bacteremia after transrectal ultrasound guided prostate biopsies in hospital employees and their relatives
Kamdar C,et al.: Urology. 72:34-6, 2008

超音波ガイド下前立腺生検後の多剤耐性菌(MDR)の出現について検討した。生検を施行した378人中4人にMDRが検出され、3人が病院関係者であった。

  • 生検後の敗血症には絶えず注意が必要である。TURPなどの手術や、感染症治療の既往がある場合も、standard precaution以上の予防が必要であろう。


(9) ホルモン療法後の精嚢と前立腺の変化:ネオアジュバント療法として最適な期間は?
Fate of seminal vesicles and prostate after medical castration: how long is the optimal duration of neoadjuvant treatment for prostate cancer before radiation?
Furuya R,et al: Urology. 72:417-21, 2008

ホルモン療法後の前立腺と精嚢の大きさからネオアジュバント療法としてのホルモン療法の期間を検討した。前立腺に加え精嚢の大きさも6ヶ月で縮小した。放射線治療のネオアジュバント療法としてホルモン療法は最低6ヶ月は必要かもしれない。

  • 精嚢の大きさと放射線療法の有害事象についての論文ではないようだ。放射線治療の前に内分泌療法を行うことで、直腸関連有害事象を減らせるか興味深い。


(10) アンドロゲン刺激後のPSA変化は前立腺癌の独立予測因子である
Change in prostate specific antigen following androgen stimulation is an independent predictor of prostate cancer diagnosis
Svatek RS,et al.: J Urol. 179:2192-5, 2008

PSAが2.5〜4.0ng/mLの範囲にある40例にシピオン酸テストステロン400mgを投与し、PSA値とテストステロン値を測定した。18例(45%)に前立腺癌が検出され、がん患者群ではテストステロン投与後のPSA上昇が有意に高かった。

  • “アンドロゲン刺激テスト”が低PSA集団の早期診断に有効であるという画期的な論文。PSA値が高いとどうか、あるいは刺激後のcut off値はいくらか、今後の検討が待たれる。


(11) LOH患者におけるテストステロン/PSA比は前立腺癌を予測する
The ratio of serum testosterone-to-prostate specific antigen predicts prostate cancer in hypogonadal men
Rhoden EL,et al.: J Urol. 179:1741-4, 2008

PSA値が4ng/mL以下の加齢性腺機能低下症(LOH)患者でテストステロン(ng/mL)/PSA比が1.8以下だと前立腺癌であるリスクが3倍上昇した。

  • テストステロン値が前立腺癌診断にとって重要になってきている。特にLOHではPSA低値でも癌があり、また悪性度が高い傾向があるので注意が必要。Morgentaler A,et al.: Eur Urol. 2008 Sep 24. [Epub ahead of print] や千葉大グループの総説も参考になる。Int J Urol. 15:472-80,2008


(12) 高Cペプチド値と過剰体重が前立腺癌死亡のリスクの増大と関係する
Prediagnostic body-mass index, plasma C-peptide concentration, and prostate cancer-specific mortality in men with prostate cancer: a long-term survival analysis
Ma J,et al. :Lancet Oncol.9:1039-47, 2008

2,500人以上の前立腺癌患者について8年間の経過観察を行った。試験開始時にCペプチド量が四分位で最高の患者群は最低群に比べ前立腺癌による死亡のリスクが2.4倍だった。BMIとCペプチドが高い患者は他のリスク要因と無関係に前立腺癌による死亡のリスクは4倍だった。

  • 致死的な前立腺癌とは何か? 病理所見に加えて、患者における種々の素因を調べることで、治療効果を上げうる生活習慣の改善を患者に提案できる可能性がある。BMIが高く、高インスリン血症がある患者では、より積極的な治療の選択肢に加えて生活習慣の改善も大きな治療因子となろう。Cancer 110:1003-9,2007も参照されたい。


(13) 生活スタイルの変化とテロメレース活性の上昇
Increased telomerase activity and comprehensive lifestyle changes: a pilot study
Ornish D,et al.: Lancet Oncol.9:1048-57, 2008

Low riskの前立腺患者でwatchful waitingに加え、菜食低脂肪の食事、ストレスの発散、サプリメントの補給など生活スタイルを3ヶ月変えたところ、LDLコレステロール値の低下に加え末梢血単核細胞のテロメレース活性が上昇した。

  • Dean Ornishはベジタリアンの超大物として有名。Low-riskのactive surveillanceにこのような生活様式の変容を促すことが今後、導入されていくと考えられる。


(14) スタチンによる血清PSA値の影響
The influence of statin medications on prostate-specific antigen levels
Hamilton RJ,et al.:J Natl Cancer Inst. 100:1511-18, 2008

前立腺癌がなく、スタチンを内服した患者でPSA値の変化を検討した。PSAの中央値は0.9ng/mLでスタチン内服によりLDLは平均27.5%減少し、PSAは4.1%減少した。生検が考慮されるPSA2.5ng/mL以上の患者で、LDLが41%以上減少するとPSA値は17.4%減少した。

  • 脂質異常症と前立腺癌のリンクが注目されている。スタチンには抗炎症作用があり、酸化ストレスを下げる。PSA値が下がることが実際に癌予防に意味がある可能性がある。


(15) アンドロゲン合成代謝阻害薬の内分泌不応前立腺癌への効果
Phase I clinical trial of a selective inhibitor of CYP17, abiraterone acetate, confirms that castration-resistant prostate cancer commonly remains hormone driven
Attard G,et al.:J Clin Oncol.26:4563-71, 2008

DHEA産生に関与するCYP17の選択的阻害薬のphaseI試験。化学療法を受けた患者は含まれていない。PSA値の50%以上の低下が半数に見られた。ミネラルコルチコイド過剰による副作用は管理可能であった。

  • 内分泌不応癌においてもアンドロゲン代謝が増殖に重要である。この薬剤が安全であれば、新しい治療の可能性が拓かれる。新潟大西山先生の論文も必読。J Urol.178(4 Pt 1):1282-8,2007


■前立腺肥大症、LUTS、OAB

(16) 1個の細胞から前立腺を再生
Generation of a prostate from a single adult stem cell
Leong KG,et al.:Nature.456: 804-8, 2008

Lin、Sca-1、CD133、CD44、CD117の細胞表面マーカーを用いて、前立腺幹細胞を同定し、1個の上皮細胞から前立腺を再生した。

  • 平凡ではあるがCD117(c-kit)が前立腺幹細胞発見のミソであった。c-kit阻害薬があらためて注目されるかも。阪大の辻村先生や三重大の杉村先生の論文が引用されている。別の見方をすれば、上皮細胞の増殖、分化には間葉系細胞の役割が重要であることを改めて示す論文ともいえる。


(17) AUA症状スコアに生じる誤解
Patient misunderstanding of the individual questions of the American Urological Association symptom score
Johnson TV,et al.: J Urol. 179: 2291-4, 2008

下部尿路症状を評価するために用いられるAUA症状スコアの評価を行った。医療者の補助の有無による症状スコアの変化を見ることによって、スコアの理解に患者の誤解があるかを調べた結果、低学歴群においては実際より、より重症のスコアが出やすいことがわかった。

  • AUASS=IPSSは、国語力によりスコアが強調されやすいという、貴重な研究。高齢者においてもそういう傾向があるかもしれない。客観的指標がないと薬効の評価は正確でない可能性がある。


(18) 前立腺の炎症と下部尿路症状
The relationship between prostate inflammation and lower urinary tract symptoms: examination of baseline data from the REDUCE trial
Nickel JC,et al.: Eur Urol. 54: 1379-84, 2008

50歳から75歳のREDUCE trialに参加中の患者の患者8,224人の生検検体を用いて、IPSSと慢性炎症の関連を調べた。慢性炎症のスコアと下部尿路症状とに関連性が弱いが有意に認められた。

  • 炎症がLUTSと関係することは明らかだが、LUTSのコンポーネントや臨床データーとの解析は今後の課題。病理診断だけでなく、バイオマーカーが必要。


(19) NSAIDの夜間頻尿への効果
Celecoxib for treatment of nocturia caused by benign prostatic hyperplasia: a prospective, randomized, double-blind, placebo-controlled study
Falahatkar S,et al.: Urology.72: 813-6, 2008

夜間頻尿に対するCOX-2阻害剤セレコキシブの効果を調べた無作為化二重盲検試験。投与群にはセレコキシブを夜9時に100mg投与した。セレコキシブ群において夜間の尿回数は5.17から2.5に減少し、同様にIPSSも改善傾向が認められた。

  • COX-2 がどこに作用点があるのかがわかるとOABのメカニズムもわかりやすい。Am J Physiol Renal Physiol.288: F466-73,2005には痛み刺激の情報伝達分子c-fosを抑制するOAB治療モデルが報告されている。


(20) バルデナフィルはLUTSを改善する
A randomised, placebo-controlled study to assess the efficacy of twice-daily vardenafil in the treatment of lower urinary tract symptoms secondary to benign prostatic hyperplasia
Stief CG,et al.: Eur Urol. 53: 1236-44, 2008

前立腺肥大症によって生じた下部尿路症状をPDE5阻害剤のバルデナフィルが改善するか無作為二重盲検試験を行った。10mgのバルデナフィルを8週間、隔日投与した結果、対照群と比べてIPSSの改善を認めた。勃起能、QOLにも改善を認めた。しかしQmax、残尿量には有意な変化を認めなかった。

  • 隔日で効果があるというのは面白い。同様な効果はほかのPDE5阻害薬でも認められている。タダラフィル: J Urol.180:1228-34,2008シルデナフィル: J Urol.177:1071-7,2007どれもIPSS、QOLは改善するがQmaxは改善しない。


(21) 前立腺肥大症の大きさがHOLEPの治療成績に与える影響
Influence of prostate size on the outcome of holmium laser enucleation of the prostate
Shah HN,et al.: BJU Int. 101: 1536-41, 2008

345人の患者に対し前立腺の大きさを3群に分けて、HOLEP手術の合併症、治療成績について検討した。平均容積135mLの前立腺が大きい群において、最もよい治療効果が得られた。

  • ほぼ同じ内容の論文がJ Urolに出ている。J Urol.180:2431-5,2008


(22) 単独施設におけるPVPの経験
GreenLight laser vaporization of the prostate: single-center experience and long-term results after 500 procedures
Ruszat R,et al.: Eur Urol.54: 893-901, 2008

500例のPVPに関する後ろ向き調査。平均前立腺容積は56mL、平均手術時間は66.4分、尿道カテーテル抜去までの期間は平均1.8日、入院期間は平均3.7日であった。3年後のIPSSは8.0、Qmaxは18.4mL/秒であり、抗凝固剤の内服を継続しても差し支えなかった。

  • 日本で認可が遅れているPVP。前立腺が大きくなると術後の血尿の頻度が増えてくる。手技はHOLEPよりも容易だが、日本でも定着するか?


(23) シングルポート、経膀胱的前立腺摘除術
Single-port transvesical simple prostatectomy: initial clinical report
Desai MM,et al.: Urology. 72:960-5, 2008

シングルポートで経膀胱的に内視鏡を用いて行う単純前立腺摘除術を3人の前立腺肥大症患者(前立腺容積187mL、93mL、92mL)に対して行った。経皮的に膀胱内にアプローチし、膀胱側から内視鏡補助下に前立腺を核出する。

  • 手技も容易で、おもしろい一種のNOTES手術。尿禁制が課題。コストを考えなければ、大きな腺腫のHOLEPの手術時間を減少する効果もある。


(24) 過活動性膀胱(OAB)がQOL、仕事の生産性、性的満足感、幸福感に与える影響
The impact of overactive bladder, incontinence and other lower urinary tract symptoms on quality of life, work productivity, sexuality and emotional well-being in men and women: results from the EPIC study
Coyne KS,et al.: BJU Int.101:1388-95, 2008

OABを呈する1,434例と年齢、性別、国籍をマッチさせたコントール群1,434例を比較した。OAB群では便秘、喘息、糖尿病、高血圧、膀胱癌、前立腺癌、うつ病の罹患率が有意に高く、QOLの低下、高頻度のうつ、性的満足感、幸福感の減少を認めた。

  • OABがある患者は生活の質が著しく悪い。治療を行うことで疾患特異的QOLに加え、どの程度包括的なQOLも改善するだろうか?


(25) 夜間頻尿の治療としての経口デスモプレシン剤
Desmopressin in the treatment of nocturia: a double-blind, placebo-controlled study
Van Kerrebroeck P,et al.: Eur Urol.52:221-9, 2007

18歳以上の2回以上の患者に対してデスモプレシンの投与(0.1-0.4mg)を3週間にわたって行った。コントロール群に比較し、デスモプレシン群では夜間排尿回数半減し、睡眠の質の改善が認められた。有害事象は重篤なものは認めなかった。

  • デスモプレシンは夜間多尿にしばしば劇的に効果がある。小児用の鼻腔噴霧スプレーが使いやすい。心不全がないか、事前に胸部X線か血清BNPでチェックをおすすめする。


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