Issue01
Current View on Urology Issue1
最近の学術誌から

■前立腺癌

(1)PSA velocityの長期観察
Large-Scale Study of Clinical Impact of PSA Velocity:Long-Term PSA Kinetics as Those without Prostate
Berger AP, et al.: Urology. 69: 134-138, 2007

PSA velocityは、前立腺癌の進行と相関する。PSA velocityは、前立腺癌と診断される相当以前から大きくなる。

  • 経時的なPSA データの重要性を再認識させてくれる論文です。毎年1回検診に来る患者さんも4.0 ng/mL 以下だからといって安心は禁物です。


(2) 前立腺癌スクリーニングにおけるPSAとPSA velocityの各年齢層におけるcut point
Age Adjusted Prostate Specific Antigen and Prostate Specific Antigen Velocity Cut Points in Prostate Cancer Screening
Moul JW, et al.: J Urol. 177:499-504, 2007

ガイドラインによると前立腺癌スクリーニングでは、PSAおよびPSA velocity はそれぞれ4.0 ng/mL、0.75 ng/mL/年をcut point としているが、50?59 歳に関しては2.0 ng/mL、0.40 ng/mL/年に引き下げるべきである。

  • 既に2.5 ng/mL をPSA cut off にすべきという論文もあります。いずれにせよ、グレーゾーンはもう存在しなくなりました。Editorial commentがおもしろい論文です。


(3)PSA densityと前立腺癌の侵襲性との相関
Prostate Specific Antigen Density Correlates with Features of Prostate Cancer Aggressiveness
Kundu SD, et al.: J Urol. 177:505-509, 2007

PSA density は、限局性前立腺癌の進行度(悪性度)あるいはPSA velocity と相関する。また、治療の指標としても有用である。

  • J Urol に多いthe experience of a big institution paper です。PSA density 0.19 ng/mL/cc以上はハイリスク癌が多いという論文です。


(4)前立腺癌の病態進展と血中線溶系因子の亢進
Association of the Circulating Levels of Urokinase System of Plasminogen Activation with Presence of Prostate Cancer and Invasion, Progression, and Metastasis
Shariat SF, et al.: J Clin Oncol. 25:349-355, 2007

前立腺癌例では健常者に比べ、血中のウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーター(uPA)およびその受容体濃度が有意に上昇していた。この上昇は、予後と関連した。

  • uPAの上流には肝細胞増殖因子(HGF)があり、以前から前立腺発癌との関係が注目されています。Bhowmick NA, et al.:Science. 303: 848-851, 2004


(5) 米国におけるBMIと前立腺癌スクリーニングの相関
Relationship between Body Mass Index and Prostate Cancer Screening in the United State
Scales, Jr. CD, et al.: J Urol. 177:493-498, 2007

米国では、BMI が高い層では、正常な層よりPSA 検査の受診比率が高かった。

肥満であること自体スクリーニング効果が高い、という興味深い論文です。Cost がかかるとみるか、benefit があるとみるか……。

(6) 高齢患者における積極的治療群と観察群の生存率の比較
Survival Associated with Treatment vs Observation of Localized Prostate Cancer in Elderly Men
Wong YN, et al.: JAMA. 296: 2683-2693, 2006

低〜中等度リスクを有する65?80 歳の限局性前立腺癌患者の生存率を積極的治療群と観察群で比較したところ、積極的治療の有用性が示唆された。

  • Radical operation群が特に死亡のHazard Ratio(HR)が低く、Pro-operation派が元気になる論文です。当然“治療を受けた群”と“受けなかった群”でのselection bias の問題は残ります。


(7) 前立腺全摘除術時の骨盤リンパ節郭清と前立腺癌再発
Limited Pelvic Lymph Node Dissection at the Time of Radical Prostatectomy Does Not Affect 5-Year Failure Rates for Low, Intermediate and High Risk Prostate Cancer: Results From CaPSURE
Berglund RK, et al.: J Urol. 177: 526-530, 2007

前立腺全摘除術時に骨盤リンパ節郭清を施行しなくても5年後の再発率に影響しない。

  • リンパ節転移症例が稀になり、かつ郭清を行うこと自体が稀になってきました。重要なエビデンスです。


(8) 小線源療法後の下部尿路症状(LUTS)発現と勃起障害の関連
Urinary Symptom Flare after Brachytherapy for Prostate Cancer is Associated with Erectile Dysfunction and More Urinary Symptoms before Implantation
Lehrer S, et al.: BJU Int. 98: 979-981, 2006

前立腺癌小線源療法施行後の下部尿路症状の発現や再発は、治療前のLUTS 重症度および施行後の勃起障害に相関が認められた。

  • 放射線の組織障害をEDとLUTSで評価しています。ATM遺伝子変異と放射線組織障害の関連を示した驚くべき文献が引用されています。


(9) GnRH アゴニストによる内分泌治療と糖尿病、心血管疾患の相関
Diabetes and Cardiovascular Disease during Androgen Deprivation Therapy for Prostate Cancer
Keating NL, et al.: J Clin Oncol. 24: 4448-4456, 2006

66 歳以上の前立腺癌患者73,196 例を対象としたコホート試験において、短期長期にかかわらずGnRHアゴニストによる治療と糖尿病、心血管疾患発症との間に相関が認められた。

  • 5 ヵ月程度でも内分泌療法のもたらすリスクは大きい!では、既に糖尿病や心血管疾患を有する患者ではどうすべきなのでしょう?


(10) アンドロゲン除去療法の身体・認知機能、QOLへの影響
Impact of Androgen Deprivation Therapy on Physical and Cognitive Function, as well as Quality of Life of Patients with Nonmetastatic Prostate Cancer
Joly F, et al.: J Urol. 176: 2443-2447, 2006

非転移性前立腺癌のアンドロゲン除去療法によって、症状評価尺度と疲労尺度のスコアは健常群に比べ低下していたが、身体機能や認知機能に差はなかった。

  • Cross-sectional study であるため、そもそもbaseline が同じグループを比較しているかが問題ですが、このような論文は増えてきています。


(11) デュタステリドの限局性前立腺癌に対する効果
The Effect of the Dual 5α-Reductase Inhibitor Dutasteride on Localized Prostate Cancer−Results from a 4-Month Pre-Radical Prostatectomy Study
Gleave M, et al.: Prostate. 66: 1674-1685, 2006

5α-還元酵素阻害薬・デュタステリドの前立腺全摘前4 ヵ月間投与は、血中ジヒドロテストステロン値、前立腺および腫瘍容積を低下させた。

  • PCPT trial で低分化癌を誘導するとされた5α-還元酵素阻害薬ですが、デュタステリドをneoadjuvant として用いるメリットは不明です。しかし、この酵素の前立腺への作用は興味が持たれます。


(12) 中〜高リスク患者に対するネオアジュバント療法
Phase Study of Neoadjuvant Androgen Deprivation Followed by External-Beam Radiotherapy with 9 Months of Androgen Deprivation for Intermediate- to High-Risk Localized Prostate Cancer
Heymann JJ, et al.: J Clin Oncol. 25: 77-84, 2007

限局性前立腺癌の中?高リスク患者に9 ヵ月間のCAB によるネオアジュバント療法を行い、効果に応じて根治的外照射を行った。内分泌治療終了後テストステロンレベルが
回復した患者は予後が有意に良好であった。

  • 難解な論文ですが、放射線治療と内分泌環境、制癌について考えさせられる論文です。


(13) 再発ハイリスク例に対するアンドロゲン除去療法の開始時期
High Risk Biochemical Relapse and the Timing of Androgen Deprivation Therapy
Ryan CJ, et al.: J Urol. 176: S61-S65, 2006

転移のない前立腺癌のPSA failure 例におけるアンドロゲン除去療法の開始の目安にはPSA Doubling time(PSADT)が有用である。

  • PSA DT が6ヵ月未満ではアンドロゲン除去療法は早期に開始すべきですが、今後は化学療法併用も考慮されるでしょう。


(14) 放射線療法後のPSA最低値と再発の関連
Nadir Prostate-Specific Antigen within 12 Months after Radiotherapy Predicts Biochemical and Distant Failure
Ray ME, et al.: Urology. 68: 1257-1262, 2006

放射線療法後12ヵ月のPSA 最低値および放射線療法開始前PSA が高値を示す例では、再発、遠隔転移、死亡のリスクが高くなる。

  • 放射線治療後12ヵ月でのPSA値(PSA12)が2.0 ng/mL以上は危険信号!


(15) 前立腺癌罹患と動脈硬化進展の相関
The Association between Local Atherosclerosis and Prostate Cancer
Hager M, et al.: BJU Int. 99: 46-48, 2006

前立腺癌例では、非前立腺癌例に比べ、動脈硬化進展の指標である頸動脈中内膜厚比(IMR)が上昇していた。

  • 現象論ですが、治療リスクを考えるときには念頭に置いてよいのかと思います。両者を一元的に説明することは未だファンタジーかもしれません。


■前立腺肥大症(BPH)

(16) BPHによるLUTSに対する抗コリン薬の効果
The Role of Anticholinergics in Men with Lower Urinary Tract Symptoms Suggestive of Benign Prostatic Hyperplasia: A Systematic Review and Meta-Analysis
Blake-James BT, et al.: BJU Int. 99: 85-96, 2006

メタアナリシスにより、BPH によるLUTS は、抗コリン薬により症状が改善し、安全性も高いことが示唆された。

  • 残尿が少ないLUTS では抗コリン薬とα1-遮断薬の併用が注目されています。


(17) BPHの長期薬物療法の比較
Long-Term Results of Medical Treatment in Benign Prostatic Hyperplasia
Kim CI, et al.: Urology. 68: 1015-1019, 2006

急性尿閉およびBPH の手術施行を基準に、α-遮断薬単独とα- 遮断薬+5α-還元酵素阻害薬併用療法を5-6 年にわたり比較したところ、併用療法がすぐれていた。

  • 長期間QOL 評価を行うことが妥当かというのも興味のあるところです。


(18) BPHと動脈硬化の関連
Atherosclerosis as a Risk Factor for Benign Prostatic Hyperplasia
Berger AP, et al.: BJU Int. 98: 1038-1042, 2006

糖尿病や末梢動脈閉塞性疾患の患者では、健常者に比べ前立腺移行帯灌流量の低下と血管抵抗係数の上昇が認められ、BPHの症状も悪化していた。

  • 心不全患者では意外にBPHが多くないでしょうか?


(19) 白内障手術中の虹彩緊張異常低下とα1-遮断薬の関連
Floppy Iris Behaviour during Cataract Surgery: Associations and Variations
Chadha V, et al.: Br J Ophthalmol. 91: 40-42, 2006

α1-遮断薬投与患者では、白内障手術時の虹彩異常緊張症状(Floppy Iris Behaviour)が、非投与患者に比べ高率に認められる。

  • 白内障手術を受ける場合は選択的α1-遮断薬を中止し、他剤に変更したほうが無難のようです。


■尿失禁

(20) 腹圧性尿失禁におけるパッドテストの継続時間の比較
Comparison of 20-Minute Pad Test versus 1-Hour Pad Test in Women with Stress Urinary Incontinence
Wu WY, et al.: Urology. 68: 764-768, 2006

女性の腹圧性尿失禁の診断においては、国際尿禁制学会(ICS)の1 時間パッドテストよりも、250 mL を膀胱内に注入して始める20 分間パッドテストの方が感度が高いこと
が明らかになった。

  • 侵襲的な検査をスクリーニングで行うのには抵抗がありそうです。専門クリニックではよいのかもしれません。


■下部尿路症状(LUTS)

(21) LUTSおよび過活動膀胱に対する薬物療法
Tolterodine and Tamsulosin for Treatment of Men with Lower Urinary Tract Symptoms and Overactive Bladder
Kaplan SA, et al.: JAMA. 296: 2319-2328, 2006

過活動膀胱を含む中等度?重症のLUTS の治療には、トルテロジン徐放薬とタムスロシンの併用が有用であった。

  • QOLの改善は併用群で大きいことが印象的です。


(22) 高齢男性におけるLUTSの疫学
Prevalence, Severity, and Health Correlates of Lower Urinary Tract Symptoms among Older Men: The MrOS Study
Taylor BC, et al.: Urology. 68: 804-809, 2006

米国の65 歳以上の男性一般住民46.2 %に中等度以上の症状を有するLUTS が認められ、日常生活に支障をきたし、QOLが低下していた。

  • 「 LUTSのみ診るのでなく、その人もみよ。」ですね。


(23) 高齢者における冠動脈疾患の危険因子としての夜間頻尿
Usefulness of Nocturia as a Mortality Risk Factor for Coronary Heart Disease among Person Born in 1920 or 1921
Bursztyn M, et al.: Am J Cardiol. 1311-1315, 2006

1920?1921 年に生まれた70 歳以上の高齢者456 名において、夜間頻尿は冠動脈疾患死の危険因子となることが明らかとなった。

  • 夜間頻尿3 回以上の男性は、早死にをするという衝撃的な論文もあります。Asplund R.: BJU Int. 84: 297-301, 1999


(24) 尿失禁、過活動膀胱、LUTSの疫学
Population-Based Survey of Urinary Incontinence, Overactive Bladder, and Other Lower Urinary Tract Symptoms in Five Countries: Results of the EPIC Study
Irwin DE, et al.: Eur Urol. 50: 1306-1315, 2006

欧州5カ国(カナダ、ドイツ、イタリア、スウェーデンおよび英国)の、18 歳以上の一般住民のLUTS 有病率を調べた大規模スタディー。64.3 %にLUTS の症状があり、夜間頻
尿が最も多く認められた。一方、尿失禁の原因では、過活動膀胱が最も多かった。

  • 排尿は悩み深い……、気持ちよく排尿できることがいかに有り難いか……。そして、治療できる我々はなんと素晴らしいのでしょう。


■その他

(25) テストステロン補充療法の前立腺への影響
Effect of Testosterone Replacement Therapy on Prostate Tissue in Men with Late-Onset Hypogonadism
Marks LS, et al.: JAMA. 296: 2351-2361, 2006

加齢男性性腺機能低下症の患者に対するテストステロン補充療法は、前立腺組織中のアンドロゲン濃度や発癌に関するバイオマーカーへの影響が小さかったため、本療法の安全性は高いことが示唆された。

  • この5 年間で「テストステロンが前立腺に悪い」という見方は、ほぼ払拭されてきました。むしろ、低いことが問題なのです。
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