VOL.6
オトコの汗とニオイ
2009/3/10 
 男性の汗の匂いは、受け手によって「花のように甘い」、「尿や汗のように臭い」あるいは「無臭」などと感じ方が異なるようだが、これは「OR7D4」と呼ばれる匂いの受容体遺伝子の違いに大きく関係しているようだ。

 テストステロン(男性ホルモン)が、体内で代謝される際に生成される「アンドロステノン」は、男女問わず汗に含まれる物質であるが、男性の汗に、より高濃度で含まれる。これまで、アンドロステノンの受けとめ方が人によって違うことは良く知られていたが、その根拠については明らかにされていなかった。

 米デューク大学の松浪宏明氏らの研究チームらによると、
(September 27,2007:Nature)
においの感じ方はアンドロステノンなどのにおいの受容体である「OR7D4」と呼ばれる受容体遺伝子の違いに大きく関与しているという。同チームが、鼻でにおいをかぎ分ける際に作動する335のにおいの受容体に対して調べたところ(in vitro)、「OR7D4」がアンドロステノンに強い反応を示した。

 「OR7D4」は、アンドロステノンおよび同じく汗に含まれるステロイドであるアンドロスタジエノンによって選択的に活性化されるが、他の64種類の匂いと2種類の溶媒には反応しなかった。そして、「OR7D4」で多くみられる遺伝子変異には、2つの異なる一塩基多型(SNP)を含んでおり、結果として2つのアミノ酸置換(R88WとT133M:‘RT’)が生じ、強い機能障害を起こすという。RT/WMあるいはWM/WM遺伝子型をもつヒト検体グループは、RT/RTグループに比べてアンドロステノンとアンドロスタジエノンに対する感受性が低く、どちらの匂いに対しても不快さの感じ方が弱かった。このように、ヒト嗅覚受容体の機能と、においの感覚との関係がはじめて明らかにされた。つまり、同じ汗のにおいでも、不快(「汗臭い、尿臭い」)や、快い(「甘い、花のよう」)、あるいは無臭などのように、人によって異なる認識がなされるのはこのためである。

 また、男性の汗のにおいに含まれる「アンドロスタジエノン」によって、女性の唾液中のコルチゾール値が上昇したという、米国のカリフォルニア大学バークレー校のClaire Wyart氏らの報告もある。
(February 7,2007:The Journal of Neuroscience )

 バークレー校の女子学生48人(平均年齢およそ21歳)に、容器に入ったアンドロスタジエノンの匂いを20回かがせた後、唾液中のホルモン「コルチゾール」の値を測定したところ、アンドロスタジエノンの匂いをかいだ女性たちのコルチゾール値は、匂いをかいだ後およそ15分以内に上昇し、最大1時間高い値を維持した。さらに、アンドロスタジエノンの匂いをかいだ女性たちは、気分が良くなって性的興奮を覚えたと報告している。比較のために、同じ女性たちにイーストの匂いもかがせたが、同じ効果は見られなかった。

 Wyart氏は、男性の汗に含まれる他の物質にも、似たような作用をもたらす可能性があるとも述べている。男性の汗の匂い、つまり男性ホルモンであるテストステロンの代謝物によって女性ホルモンが上がるということは、逆に、女性ホルモンの代謝物のいずれかの匂いによって、男性ホルモンが上昇する可能性があるかもしれない。

September 27,2007:Nature
February 7,2007:The Journal of Neuroscience
 
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