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アジアでがんを生き延びる

執筆 : 
Shigeo Horie 2010-11-3 18:00
第6回アジアがんフォーラムが、東京・駒場で開催された。

この会は河原ノリエさんと、筑波大学から東京大学先端研に移られた
泌尿器科医であり、日本のがん医療のfront runnerである
赤座英之先生が中心となり開いているもの。

医学や医療にとどまらず文化や社会からみた「がん」を
アジアの視点から考えるというユニークな会であった。
姜尚中さんの講演には間に合わず到着したところ、会場の講堂は超満員。
日中学生交流の話に続いて、日本・韓国・中国からのかたがたの、
「がんと文化」のシンポジウムがはじまる。
永六輔さんのするどいつっこみに場内大爆笑。
ご自身乳がんの会にただ一人の男性として長年参加されており、
(男おばさんというのも彼のニックネームでしたっけ…)
[(乳房を喪失された)乳がんの患者さんこそがもっとも女性らしい]
という言葉は会場から大きな拍手を持って迎えられた。

永さんの良い医師の10カ条、良い患者の10カ条には爆笑。

良い医師は、
1.患者の話をよく聴いてくれる
2.患者をよくわかってくれる
3.薬に頼らない
4.専門医を紹介してくれる
5.地域の医療事情に通じている
6.家族のキモチをわかってくれる
受け入れてくれる
8.くらしの注意をしてくれる
9.患者の寂しさや虚しさをわかってくれる
10.ホントのことを教えてくれる。

良い患者は、
1.誤診や医療ミスに驚かない
2.自分で病名を決めつけない
3.待合室の噂話に加わらない
4.同じ病気にかかった医者にかかる
5.同じ趣味の医者にかかる
6.医者に気取らない
7.命の終わりを考えない
8.遠くの医者より近くの獣医(動物も人もたいして変わらない)
9.奇跡を信じない
10.医者がご臨終と言ったら死んだふりをする

「がん」という病気のユニークな点は、多くの場合、
最終段階まで思考、行動、が損なわれないこと。
それだけに別離、喪失のつらさが大きい。

東京大学の真鍋祐子教授は、
お母さまが乳がんで亡くなられた経験を語られていた。
科学的と思っていた自分が、代替医療にはまったことや、
イタコに霊を呼んでもらい、津軽弁のお母さんの霊が話す
「医者の発見が遅く..」のくだりで号泣されたことなど
印象深い体験を話された。
韓国、中国のかたもそれぞれのがんの死生観を話された。
立場はいろいろあるものの、中国は生死についてドライで
韓国は日本以上にウエットという印象を持った。
日本のみならず中国・韓国はじめ多くのアジアは高齢化が進み
いやおうなく「がん」は健康政策に大きな意味を持っている。
しかし現在の高価な薬剤や医療技術をあまねく
世界の国々で享受できるのか?
来年僕たちが開く
6th Japan-Asean Men’s Health and Aging Conferenceでも
アジアとがんは一つの大きなテーマとしてとらえたいと強く感じた。
一方アジアの持つコミュニティーサポートの力は
西欧社会に(おそらく)ない大きな力だと思う。
「がん」になったあとの時間は、
薬剤や手術・放射線だけで決まらない。
食事や周りのサポートが大きい。
実際転移をした乳がんの患者さんでも、
グループでのメンタルサポートがあると、
通常の医療を受けたときよりもはるかに
(通常の医療19カ月、メンタルなサポートあり37カ月)
長生きするという画期的な論文がLancetに20年前に出ている。
Effect of psychosocial treatment on survival of patients with metastatic breast cancer.

じつはその後の研究や緩和医療の進歩で、
このメンタルサポートの効果は疑問視されていたが、その後Cancerに、
ホルモン療法を受ける患者群でやはり高い効果
(通常の医療9カ月、カウンセリングあり30カ月
があることがわかった。
Effects of supportive-expressive group therapy on survival of patients with metastatic breast cancer: a randomized prospective trial.

この延命効果は当然ながら現在までのどんな新薬も及ばない。
またカウンセリングは癒しでもある。
家族、友人、仲間さまざまなサイズのコミュニティーを持つことで
こういう効果は可能なのだと思う。

産業としての製薬企業は「新しい」効果のある商品化できる薬剤を開発する。
しかし、からだの不調は薬だけでは解決しないだろう。
「病は気から」という言葉は重みがある。

文化の日にふさわしい、すばらしい集いだった。

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