掲載日 2010-03-23

帝京大学で毎月開催されているがんセミナー。
3月は、帯津良一先生をお迎えして、医療従事者と一般の方々が一緒に、お話をお伺いしました。

BLOGもご覧下さい⇒「Blog:がん治療“場”と“戦略”」

帝京がんセミナー
「“場”と戦略−がん治療新時代」

日時:2010/03/04(木) 19:00-20:00
場所:帝京大学新本部棟2F臨床大講堂
講師:帯津良一先生(医療法人直心会帯津三敬病院 名誉院長)

内容:

ホメオパシーは非常にホリスティックな治療法で、ホリスティックを目指す者にとっては、よけて通れない療法だと思います。『代替医療のトリック』(サイモン シン著)という本を読んでみたところ、「ホメオパシーはプラシーボ効果に過ぎない」と記載されています。また、鍼灸については多少好意的に書かれてありましたが、最終的にはプラシーボ効果であると書かれていました。

鍼灸については、中国4000年の歴史があり、携わっているかたも多数いらっしゃいます。代替医療はプラシーボ効果に過ぎないというのは、大きな間違いであり、医療と代替医療は異なります。「医学」であればこれは代替療法の入るすきはありませんが、「医学」と「医療」とは違います。

プラシーボというのは「医療という場の自然治癒力」のことではないかと考えています。自然治癒力は、ヒポクラテスの時代から取り上げられているのに、未だ正体がつかめないもので、これは一体何であるかと、長い間考えられてきたものです。「最高の治療法とは、最小の侵襲で、最大のPlacebo効果をもたらす方法である」(Andrew Weil)という言葉があります。私もこの年齢になると、出来るだけPlacebo効果の高い方法を選択したいと思います。

医学は科学ですが、医療とはひとつの“場”の働きだろうと考えます。戦争でいうと、医療(Medical Field)とは、最前線(The flont)、医学(Medicine)とは、兵站部(Logistics)です。湾岸戦争の時にラムズフェルド国防長官が「戦争というのは攻め込みさえすればよいのではなく、攻め込みながら後方の基地を築かなければならない。そうでなければ、後方の基地から安心して最前線に物資を運ぶルートを確保しなければならない。戦争というのは、そういうものだ。」と言っているのを今でも思い出します。プラシーボ効果というのは、兵站部では必要がありませんが、医療の最前線では、一つ一つの武器の性能を統合して一つの戦略を行うものですから、プラシーボ効果も必要です。

統合医学は病というステージの方法論の問題です。ホリスティック医学というのは、人間を丸ごとつかむもので、生老病死、死後の世界まで全てを対象とします。対象の広さが、統合医学とホリスティック医学では異なるのです。統合医学の流れは、世界的なものなので、統合医学が形を成せば、ホリスティック医学も視野の中に入ってきますので、この流れに私は大変期待を持っています。
Holisticとは、身体性(からだ:Body)、精神性(こころ:Mind)、霊性(いのち:spirits)の3つをみなければいけません。“場”のエネルギーを命といいます。“場”(Field)とSoul & Spiritsが脳に伝わりMindを上げていくのです。

<西洋医学と代替療法>

 西洋医学           代替療法
Body              Mind・Spirits
身体/細胞系            エネルギー場
病因論              健康生成論
治し              癒し
治った、治らないの二極性  一歩前進
エビデンス          エビデンスと直観
エネルギー的側面      エントロピー的側面
主客分離          主客非分離

このように、西洋医学と代替療法では異なりますので、同じ土俵で論ずること自体に無理があるように思います。

医療とは、“場”(Field)と“戦略”(strategy)だと、最近考えるようになりました。いかに医療の“場”を高めるか、様々な方法をいかに組み合わせて戦略的治療法を組み立てるか、ということが鍵になります。ご自身の体験を書いた書籍『がんに効く生活』の「病気との闘いは、人間の内なる熱い冒険である」(ダヴィッド・S・シュレベール)という言葉は、私の好きな言葉です。冒険はリスクを伴いますが、その中で努力して乗り切ることが大切です。医療者と治療者が一体となることも必要です。

「今日の治療が何かむなしく思える今日この頃です」(患者さん)いろいろ抗ガン剤を試しても効果がなかった時にこのように感じたそうです。患者さんがむなしく思うような医療を行っているようではいけません。「患者さんも代替療法の治療者も西洋医学の人たちも、それぞれ孤立している」(田口ランディ)このように、それぞれの繋がりがないと、“場”もできません。“場”ができないと、“場”の自然治癒力が出てきません。

「人間にとっての究極の場 それは浄土」帯津良一
「人間は“場”の中の存在 いまここが浄土である」帯津良一
「浄土とは 本願の“場”である」本多弘之

自然治癒力とは、本来的に“場”に備わった能力である。“場”の存在は、そこに自然治癒力が存在する。環境の中に探さなければならない。自然治癒力は人間の独占物ではなく、無生物、無機物にも存在します。どの“場”にも自然治癒力が存在し、また、どの“場”にも本願が存在する、つまり、自然治癒力とは、実は、本願だと思うようになりました。

「哀しみは人の中に必ずなくてはならない聖火なのだ。その聖火によって人間は救われ癒されるのだ」(藤原新也)人間はみな、哀しみを抱いて生きています。哀しみを敬いあって生きていくもの。この哀しみに人を癒す力がある。なぜなら、己の心を犠牲にして、他者への深い想いがこの哀しみの中に存在する。と、藤原新也さんは言っています。自然治癒力とは 人の哀しみである。自然治癒力とは あるときは本願、あるときは哀しみ となります。これはいずれ繋がるでしょう。そして、本願と哀しみは、慈悲ともいいかえることができます。

「祈りに満ちた心 万物と一体となる」(ラリー・ドッシー)
「何も願わない 手を合わせる」(藤原新也)

「戦略と戦術」とは、カール・フォン クラウゼヴィッツが「戦争論」の中に書いた言葉です。戦略とは、戦術を統合するものです。これは風林火山「疾きこと風の如く、静かなること林の如く、侵掠すること火の如く、動かざること山の如し」に通じます。がんを克服するには、徹底的にたたく方法と、共存する方法がありますが、どちらかではなく、どちらも重要な方法です。病を克服するには、ホメオパシー、代替医療、東洋医学、西洋医学を基本に、気功と食事を補い、それを心で支えることが重要です。

“場”を高める、つまり当事者のエネルギーを高めるには、志と覚悟で決まると思います。帯津三敬病院の理念は、「今日より良い明日を」です。

統合とは、積分のことで、西洋医学と東洋医学を一旦解体し、新しい体系を目指すくらいの思い切った考えが必要です。医師と患者の統合があってはじめて本当の統合といえるのです。「医療危機、それはまた、私たち一人一人にとって、「死生観」に想いを巡らす大チャンス」(桜井よし子)

生と死の統合が行われてはじめてホリスティック医学です。生と死の統合は、生きているときにできるのが良い。私も、生と死の統合に向かっていきたいと考えています。

[文責:UROLOGIST編集部]


掲載日 2010-03-23

中高年ヘルスケアセミナー
「泌尿器専門医に聞くー近ごろあれっ?−と思う方のために」男性ハツラツの秘訣
というタイトルで、セミナーが開催されました。
当日は、雪が降る中、会場には多くの方が参加されました。

日時:2010/02/13(土) 13:30-14:30
場所:新宿明治安田生命ホール

講演内容:

皆さんは、男性と女性では、どちらが元気だと思われますでしょうか。「男性と女性のどちらが元気?」という佐賀県で行ったアンケートによると、アンケートの中の5つの項目で、全ての年代で女性が元気という結果が出ています。「心から笑えますか?」という質問では、50代で男女の差がはっきり出ていますし、自分の役割があるか、という質問では女性は年齢が上がるにつれてYesが増えているのに比べて、50代男性ではYesが減っています。また、肥満の割合をみてみると、男性の場合、全ての年齢において高くなっていますが、反対に女性は全ての年齢で低くなっています。いかに女性が健康の意識が高いかがわかります。

この健康のカギになるのがホルモンです。「テストステロン」という男性ホルモンは、血管を健康にし、コレステロールなどにも関与しています。また、覚えたり、判断したりという認知機能にも関わります。男性ホルモンは男性だけに働くわけではありません。女性ホルモンは男性ホルモンからつくられ、女性の体内では脂肪や副腎から作られます。

男性ホルモンは、社会との関わりが強いホルモンであり、冒険心やチャレンジ精神にも関与します。また、競争すると出てくるので、囲碁、マージャン、ゴルフなどをやると出てきます。よく、男の子は褒めて育てろといいますが、Winner Effect=勝利のスパイラル、といって、成功体験があるとさらに男性ホルモンの分泌が増え、それが自信につながり、また成功を導く、というように良い循環がうまれます。

男性ホルモンは女性には少ないといわれてきましたが、“PNAS”に掲載されたグラフに示されているように、男性ホルモンの多い女性は、少ない男性よりも数値が高くなっています。女性の上位3分の1くらいの人は、男性に匹敵するくらいの男性ホルモン値があります。

男性ホルモンが特に高い人はどのような人でしょうか。例えば、政治家や音楽家など、自分の考えを強く表現する職業に多いのです。ミックジャガー、小泉元首相など、男性ホルモンが高そうですね。これには科学的な裏づけがあり、顔の長い人はホルモンが高いのです。また、薬指が人指し指より長い人も、男性ホルモンが高いという結果も出ています。

「エストロゲン」というホルモンは、女性ホルモンの一種ですが、体内では、男性ホルモンである、テストステロンからつくられるため、男性の体内でも働いています。また、女性で生理がなくなった方は、男性ホルモンからつくられます。このホルモンは、社会性、ネットワークに関与し、同時にいろいろなことができてしまうのもこのホルモンの働きによります。また、言葉の能力が達者で、利他行動にも関与しています。

また、脳下垂体から指令が出る脳内ホルモンは、バソプレシン、オキシトシンなどがあります。バソプレシンは、尿を濃くするホルモンですが、テリトリー(縄張り)や忠誠心に関与しています。オキシトシンは、授乳のときに出るホルモンで、他人への思いやりや信頼にも関与します。

我々は、テストステロンがどのようなことの関与するのかを、幅広く健康な人で調査をしていますが、それによると、口腔機能、気分・意欲、うつ、満足感などに関与していることがわかってきました。また、ケンブリッジ大学の調査によると、ホルモンの高いトレーダーは儲けも大きかった、という報告を出しています。ただし、テストステロンが高すぎると、いけいけどんどんになりやすく、個よりも大義を優先し、痛みがあってもあまり感じなくなったりします。反対にテストステロンが下がると、意欲が低下し、チャレンジができなくなります。何をするにもおっくうになり、からだのあちらこちらに痛みが生じてきます。このような症状は男性更年期といわれ、女性の更年期と違って、なる人とならない人がいますし、また、いつ発症しいつ改善するのかも全くわかりません。

テストステロンは年齢によって減ってきますが、東京のサラリーマンのホルモン値を測定したところ、驚くべきことに、40-50代は60代より低くなっていました。ホルモンは寝ている間に出てきますから、良い睡眠が重要となります。テストステロンが減少すると様々な症状が出てきますし、高齢者では、テストステロンが低いと死亡率が高くなるという結果もあります。テストステロンは、椅子から立ち上がる、ジグザグに歩く、など身体機能にも関与しています。また、テストステロンが減ると内臓脂肪がつきやすくなりますから、テストステロンが低い人はメタボのリスクが3倍になります。

このようにテストステロンが低くなると、いろいろな病気にかかりやすくなり、ハツラツ度が減ります。ホルモンが減る原因の一つにストレスがありますが、これは、ストレスがあると、視床下部からのホルモン分泌の指令が出なくなるためです。このように、ハツラツ度によってテストステロンは保たれているのです。40歳以上の人は特に、リラクゼーションを積極的に行うことが重要でしょう。

赤い色は男性を元気にします。「赤」は男性ホルモンを分泌させるきっかけになります。運動も重要で、運動することによってテストステロンが分泌される、という結果もでています。また男性ホルモン分泌には「アンチエイジング」とも関与しています。アンチエイジングとはさびないことですが、酸化ストレスの大きな原因は、交感神経です。酸化ストレスには、活性酸素が関与していますが、活性酸素を減らす方法は、今のところ、カロリーを減らすことが最も有効と言われています。腹七分目くらいがよいですね。

活性酸素の影響を調べるには、男性では、早朝勃起の有無をみることが、手っとり早い方法です。EDは血管老化の現われです。40歳以上では4割の方がEDだという結果もありますが、EDは下半身の問題だけでなく、体の異常の前兆を知らせてくれる重要な健康サインなのです。

体のさびに対処するには、いろいろな食べ物を食べることです。抗酸化には、いろいろな種類の食べ物を食べることが重要です。EDに用いられる“PDE-5阻害剤”というお薬は、血管を広げる作用があります。我々の研究室が調べたところ、PDE-5阻害剤を6週間、週1回服用すると、酸化ストレスを示す8OHdGの数値が1/3に減り、テストステロン値は2倍に増えていました。

テストステロンを高めるには、仲間や友達を大事にすることです。また、体をさびさせないようにするには、適度な運動と、旬の様々な食材を少しずつ食べ、そして、食べ過ぎないことが重要です。健康法にはいろいろありますが、人生を楽しくハツラツと過ごすことも健康法の一つと言えます。そして、男性の重要な健康サインであるEDを諦めず、恐れないことです。

         [文責:UROLOGIST編集部]


掲載日 2009-01-19

 2008/12/14、東京ウィメンズプラザにて『もっと知ってほしい「泌尿器がん」のこと』というタイトルで、CNJがん医療セミナーが開催された。
CNJ柳澤昭浩事務局長による開会のご挨拶に始まり、筑波大赤座先生が「泌尿器科で診断・治療されるがん:ここが重要」で泌尿器科のがんについて全般のお話をされた後、精巣腫瘍については筑波大の河合先生、前立腺がんは千葉大の市川先生、尿路上皮がんは筑波大の宮永先生、腎がんは帝京大の堀江先生が、それぞれ講演された。また、プレゼンテーターとしてTBS報道局開設室の小嶋さんがご自身の体験を含めたお話をされ、CNJ吉田理事長の閉会の挨拶でしめくくられた。
(各講師の先生方のご講演内容は、CNJビデオライブラリーにて閲覧が可能ですのでご参照下さい。)

<「腎がんの予防・診断・治療と今後」 〜帝京大学医学部泌尿器科学 堀江重郎〜>
腎臓は、刻一刻尿をつくっているという実感がないこともあり、比較的沈黙しやすい臓器と言われますが、血液をろ過して尿をつくる、老廃物を尿の中に排泄するほか、ホルモンを分泌する内分泌器官であり尿路に関連する重要な臓器です。また、血圧、塩分、ビタミン、ホルモンの調節や、血液を増やす物質もつくっている多才な臓器ともいえます。
腎臓がんの発症は50歳以降に多くみられ、男性は女性に比べて2倍程度多いことが特徴です。年間1万人ほどの方が発症し、3000人くらいの方が腎臓がんで亡くなっています。また、地方によって罹患率が異なり、東北地方や北海道で多く九州地方で比較的少ないことから、日照時間や寒さ、塩分摂取が影響しているのかもしれません。また、世界的にみても北欧に多いことから、やはり日照時間、ビタミンDなども影響すると考えられます。実際にビタミンDは腎がんに対して抑制的に働くという研究発表もあります。また乳製品の摂取にも関連があると言われています。
腎がんをご自身で発見される場合は、血尿か疼痛が主な症状となります。また、超音波検査や、他の検査をした時にたまたま見つかることもあります。腎臓は身体の深いところにある臓器のため症状が現れにくいものの、早期(分類の鬼)であれば、5年生存率は99%となっています。腎臓がん全体の5年生存率は60%ということからもわかるように、早期発見が大変重要となります。
 腎がんのリスクファクターは、喫煙と肥満と高血圧です。1日10本以上タバコを吸う方はリスクが2倍以上、肥満ではBMIが30以上の方は4倍、高血圧ではリスクが2倍となります。ですから、タバコを吸って肥満で高血圧の方は要注意です。リスクファクターの原因としては、活性酸素が考えられます。毒物や紫外線などが身体に入ると遺伝子を障害します。現在のところ、適度な運動と、適切な食べ物を選ぶということが重要だといわれます。また、カロリーを摂り過ぎないことも大事です。
 腎がんを分類する場合、腫瘍の大きさと位置から進行度を判定します。TNM分類が国際的な分類で、Tは腫瘍(Tumor)、Nはリンパ節(lymph nodes)、Mは転移(metastasis)を表しています。Tの場合、7cmがT1なので、腎がんは比較的大きくても治りやすいため、他のがんのように5年で終わりではなく、もう少し長期にわたって定期的に診察を受ける必要があります。
 治療については、手術と薬物治療の2つに分かれます。薬物治療では、サイトカイン療法と分子標的治療薬による治療があります。基本的には手術が出来る場合は手術をし、その後、薬物治療に移ります。手術には、腎臓全摘と温存、また、開腹と腹腔鏡手術の選択肢があります。薬物治療のサイトカイン療法は、腫瘍細胞に対して身体の応答力を高め、免疫細胞を活性化することにより10%の方に5ヶ月くらいで奏効するといわれます。インターフェロンの効果は、良く効く場合もありますが全ての方に有効であるとはいえません。また、分子標的治療薬についても同様なことがいえます。腎臓がんは、血管をつくりやすいがんですが、そこを特異的に抑えるのが分子標的治療薬であり、腫瘍の血管をつくらない、また、ガンの増殖を抑えることを特徴としています。さらに朗報としては、海外よりも日本人のほうが良く効くという結果もでてきています。

<Q and Aセッション>
Q。分子標的治療薬はどの程度患者のためになっているのか
A。腎臓がんの分子標的治療薬は本年(2008年)に認可がおり、ようやくスタートしたところです。どのような効果があるのか、メリットと副作用をみながら、患者さんにとって最も良い治療を行っています。従来の治療薬でも大変良く効くものもあるので、分子標的治療薬が全てではなく、やはり患者さん一人一人の状態に合わせた治療をしていく中で、ここから評価が始まると考えています。

<最後に一言>
男性は日々の忙しさもあって、女性よりも医療機関へのアクセスが悪い。腎がんなどは超音波検査を少しやればすぐにわかるものでもあり、また、触れればわかるようなことでも、放っておいたためにかなり進行してしまうことがあります。是非、早期診断をこころがけるようにして下さい。

[文責:UROLOGIST編集部]


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